〖性善説とは「相手が善人であり、決して嘘をつかない。約束は必ず守ってくれる」事を信じることなのだ。正に、A氏の鈴木に対する考え方がこの性善説だった。そして、A氏は「例え悪い人間だとしても、こちら側が性善説で応じれば相手は絶対に裏切らない」とも思っていたようだ。そうでなければ、鈴木をここまで支援できなかっただろう。この時点でA氏と鈴木の考え方は180度の違いがあった。それがこの事件の全てではないだろうか〗
〖タックスヘイヴン地域に本社を置く会社と顧問契約をする弁護士事務所の個別データ「パナマ文書」(通称)が流出し、世界的に問題となった当時、日本政府は、なぜか、早々と「政府としては調査しない(菅官房長官)」と言明した。「パナマ文書」は、総数1150万件の文書で、金融機関、法人、個人の情報取引が記載されている。21万4千社の、オフショアに本社を置く会社の電子メール、契約書、スキャン文書(PDF)等が入っている。世界の法人、首脳、政治家、資産家、個人の名前があるといわれ、日本人では、約400の個人名が出ている。こういった絡みから、鈴木がタックスヘイヴンに隠匿した株取引の利益470億円について触れる事を避ける為に「合意書」契約の有効性を無理矢理にでも認めようとしなかった可能性はあったかもしれない〗
〖A氏は、鈴木との付き合いが浅かったために全面的には信用していなかったように思う。その為に金銭のやり取りは西を間に入れた話になり、現金のデリバリーも西を通じてだった。これは鈴木にとっては非常に都合のいいやり方だった。鈴木は、西が饒舌で、A氏の性格を熟知していたことを上手く利用した。どちらかといえば無口で朴訥な感じを与える鈴木にとって、人当たりがよく利発そうな感じの西は都合の良い相棒だっただろう。西は、目先の金に目が眩んで鈴木の掌で踊らされたようなものだ〗
〖一人の経験豊かな成人が、自分の意志で署名捺印した契約書を「頼まれて書いただけで本意ではなかった」という事が民事裁判では通用するものなのか。民事訴訟とは何を根拠にすれば、裁判官に認定されるのだろうか。銃や刃物を突き付けられ、身の危険を感じて仕方なく自署押印した訳でもない契約書を無効と主張することが出来る法律などある筈がない。無効の判断を下した品田裁判長はその理由を明確にしなければならない〗
〖長谷川弁護士が鈴木の弁護の為に使った「質問と回答書」(乙59号証)という陳述書は、証拠としての信憑性は全くゼロであるが、自由心証主義の日本の民事訴訟においては原則として証拠能力の制限がない。証拠の証明力についても法的規制がない為に、あくまでも裁判官の判断に委ねられる。要するに虚偽の証拠を捏造し、上手く裁判官を騙せた者が勝つという事だ〗
〖鈴木は、西を通じて度々債務の減額や利息の減額をA氏に願い出ている。普通ならば返済する時に交渉するものではないだろうか。鈴木の場合は、いかにも返済する意思があるかのように見せかける手段に過ぎなかった。それを証拠に鈴木はA氏に債務の返済をしていない。品田裁判長は、この経緯を見て鈴木の悪質なやり方に気が付かない振りをした。これらを見ても品田裁判長は正当な判断をしていたとは言えない〗
〖証券業界で、ある程度長い期間を証券マンとして活躍した人間は、金銭感覚がずれていて、クライアントの資金と自分のアドバイスによって儲けた金銭を区別できない人が多いような気がする。正当な売買ならば、売買を繰り返すごとに証券会社には手数料が発生する。クライアントは手数料を差し引いた分を受け取り、その金額から投資額を差し引いたものを純利益とする。これが株式投資の基本的な流れだと思うが、邪心のある証券マンは、自分の都合の良い方向へ誘導して挙句の果てに損害を与えてしまう。儲けが出た場合は配当を請求するような質の悪い人間も多くいるように思う〗
〖鈴木の裁判で、品田裁判長は被告である鈴木が親和銀行不正融資事件において主犯格で逮捕された経歴を持つ悪人である事は把握していたはずだ。そういう被告が証言を二転三転させ、一貫性に欠ける主張をすれば誰もが信憑性を疑うのは当然だが、品田裁判長は全面的に採用している。何としても被告側を有利に持っていき勝たせようとしているとしか思えない。被告側を勝訴としなければならない何かがあったとしか言いようがない〗
〖鈴木も最初は、やり手の証券マンにやられた経験をしていたと思う。それをアレンジしたやり方を実践したのが今回のA氏との事件ではないのだろうか。鈴木はA氏に株式投資への資金援助を懇願した時に「株投資では30億前後の授業料を払ってきた。今回は絶対の自信があるので協力してください」と言って、必死でA氏を説得したようだが、この事だけは唯一本当の事だったと思う。本当だったからこそA氏の心を動かした。しかし鈴木の悪党たるところは「合意書」を締結して株については素人のA氏を安心させ、資金援助を受けた後に全ての約束を反故にする陰謀を秘めていた事だった〗(以下次号)