昭和61年に牛久愛和病院を買収した種子田益夫は、それまでに買収していた宮崎や高知等の病院を統括する東京本部を開設して、長男の吉郎を役員に据えると同時に、病院を運営する医療法人の理事長に就任させた。そして、今、吉郎は自身の息子である佑人を社団法人常人会グループの理事長に就けるとともに、グループの中核となるメディコム・アンドホールディング・マネージメント(以下メディコム社)という会社の取締役にも就かせて、着々と世襲の流れを作っている。社団法人常人会グループは経営コンサルタントを事業目的にしているが、コンサルタントは病院グループを統括するための名目だろう。またメディコム社はグループの各病院の施設を所有するだけでなく、病院が運営上必要となる医薬品を始め介護用品、医療用機器ほか想定するすべての商品の販売を手がけ、清掃や給食業務等も請け負うことを事業目的に謳っている会社だ。
同社は2018年度で約24億円を売上げ、経常利益は約2億円を計上しているが、これが吉郎を筆頭とする種子田一族の“財布”になっているのだ。
種子田益夫から長男の吉郎へ、そして吉郎の長男佑人へと病院グループの経営が引き継がれる中で、病院グループが事業として一定の成果を生み出している背景には、種子田益夫が最低でも3つの金融機関を不正融資で事件に巻き込んで潰し、さらに、「いざとなったら病院を売却してでも返済する」と言って債権者を騙し続けて、約束した病院を担保に供することも、元金はおろか金利さえ一切払わないまま病院の買収や経営維持の原資に充ててきた結果であることを、現理事長の吉郎は全く自覚もしていなければ「父親と病院は一切関係ない」という態度を取り続けてきた。こうした、極めて歪んだ病院グループの実態を、このまま吉郎が目論んでいる世襲で容認することは決して許されるものではない。
昨年末に田村憲久厚生労働大臣ほか迫井正深同省医政局長、大井川和彦茨城県知事、中川俊男日本医師会長に宛てて、吉郎率いる常仁会病院グルプに対する監督機関による指導を求める書面が送られていたことが分かった。書面を送ったのは種子田益夫(故人)に騙された債権者たちだが、種子田益夫は病院を担保に供すると言って債権者たちから融資を受けながら、いつまでも担保提供を履行せずに債権者たちから逃げ回っていただけでなく、長男の吉郎もまた病院グループを統括する理事長という要職に就きながら、父親の債権債務については一切知らぬ存ぜぬを通すという極めて無責任な対応をしてきた。種子田益夫は昨年10月13日に死亡したが、全責任を負うべき吉郎に対して監督官庁である厚労省と茨城県、並びに日本医師会が強力な指導をすべきであるという趣旨になっているという。
病院の債権債務に所管の厚労省や自治体等が口を挟む所ではないと思われるかもしれないが、種子田益夫が病院を買収するさ中にあって、新たに病院を買収し、あるいは買収した病院の経営を維持するために債権者たちは融資を実行した。当然、種子田が病院を担保にすると言い、長男の吉郎が理事長を務めているからいつでも病院の権限を父親の益夫に返すと言っているという種子田益夫の言を信じてのことである。しかも種子田は、いざとなれば病院を売却してでも債権債務の処理を、責任を持って履行するとまで言って債権者たちを騙し続けたのだ。その経緯からすれば、国民の命を預かる病院の経営が吉郎以下種子田一族によって支配されることで、ただ収益の確保だけに目を奪われて社会的責任を果たすことなど眼中にないという実情を放置することは監督機関として大きな問題であるはずだ。厚労省の大臣と医政局長、日本医師会会長、茨城県知事宛に吉郎がトップとして君臨する常仁会グループに対する適切な指導の強化を徹底することを求めるのは当然だが、病院を監督し指導する立場にあるそれぞれが、これまで常仁会グループに対して適切な監督指導が行われてきた形跡はみられない。
吉郎が理事長として責任を問われるべきは、父親の種子田益夫が死亡した直後に、吉郎、益代、安郎の3人が一斉に相続放棄するという極めて悪質なやり方を実行し、さらに公共機関である病院を私物化しながら長年にわたってコンプライアンスに抵触する病院支配を行ってきた点にある。
常仁会グループは牛久愛和総合病院を運営する常仁会を筆頭に、晴緑会(高知、宮崎)、明愛会(北九州)、白美会(新潟)の各医療法人(7施設の病院)を傘下に置き、その他2つの社会福祉法人(介護施設)を擁する一大病院グループを形成しているが、医師の資格を持たない吉郎が理事長に就くことができたのは、医療法第46条の6の但し書きに基づき、当時の茨城県知事である橋本昌氏が認可した経緯があるからだった。しかし、吉郎自身には医療業界での実績も経験もなく、あくまで父である種子田益夫の指示で理事長に就いたに過ぎない。詳しい経歴は分からないが、吉郎の長男佑人もまた吉郎と同じく医師の資格もないまま病院グループのトップになりあがっていく積りに違いない。
種子田益夫は昭和61年に牛久愛和病院を買収しているが、吉郎が同院の理事長に就いたのが他の医療法人に比べて遅かったのは、吉郎の適格性が問われ続けていたためだ。中でも常仁会グループの病院はいずれも「地域医療支援病院」として運営しているが、医師の資格が無い者が理事長に就くために必要な要件(医療法第46条の6の但し書き)を整えるためには必須だったからである。
種子田益夫は、過去に法人税法、売春防止法(場所提供)等に違反して有罪判決を受けた身で、公共機関である病院の理事長に就けるものではなかった。
そこで、側近で医療業界に精通していた田中延和氏に買収した病院を統括する東京本部を立ち上げさせるとともに、田中氏は業界で培った人脈を生かして東京女子医大の医師たちを牛久愛和病院にスカウトしつつ他の大学病院にも人脈を広げていったという。そして、益夫は長男の吉郎を理事長に就かせる時機を狙っていた。当の吉郎自身は医療業界とは全く縁のないまま大学(日本大学芸術学部)を卒業後、わずか1か月間、米国の医療業界を視察した後に、俄か仕立てで開設した東京本部の役員に就き、病院経営のまねごとを始めたに過ぎない。それは、吉郎自身の意志に関係なく全て益夫がオーナーとして指示を出した結果である。ちなみに吉郎は外部に公表する経歴で学習院大学大学院修士課程卒業を強調しているが、同大学の資料によると、吉郎は平成14年に「日本におけるホスピスの運営と経営の研究」と題する論文で修士課程を終えている。吉郎が牛久愛和総合病院の理事長に就いて数年後のことだが、果たして吉郎にそれほど勉学の意欲があるとは思えず、ただただハク付けのためにしか見えない。
種子田益夫は、愛和グループを率いて事業家を名乗ってきたが、実態は虚業家そのもので、複数のゴルフ場を経営しているとしながら実際には公表した定員を遥かに上回る会員権を乱売する詐欺行為を繰り返した。それだけではない、種子田はいくつもの金融機関を経営破綻に追い込むような不正融資を実行させて、そこで調達した資金を株投機や遊興費に充てるという違法行為を厭わない人格の持ち主だった。
複数の金融機関での不正融資(主に特別背任)が相次いで発覚したのは平成8年頃のことだが、種子田は自ら事件の当事者になることを見越して、多額の債務返済から逃れるとともに病院グループを私物化する工作を弁護士に指示して愛和グループと病院グループとの切り離しを本格させた。その結果、3つの金融機関(国民銀行、東京商銀信用組合、武蔵野信用金庫)が経営破綻に追い込まれた。
病院の買収と買収した病院の経営を安定化させるために、種子田は個人の債権者からも多額の借り入れを起こしていたが、その大半が前述したように病院の買収と病院の経営維持のために費やされた。債権者に対しては「病院を担保にします」と言って債権者の友人知人をも巻き込ませ「いざとなれば病院を売却してでも返済します」とか「病院の理事長は息子の吉郎にしていますが、息子も『病院は父からの預かり物なので、いつでも必要に応じてお返しします』と言っているので大丈夫です」と債権者たちを前に繰り返し述べて融資を受けたにもかかわらず、いつまでも病院を担保にする約束を果たさず、返済も滞らせ続けた。「司法当局の取り調べや公判で時間が取れません」と側近や部下に言わせて債権者たちから身を隠し続け、何年も直接の面談を避けていたために債務総額は平成15年5月現在で368億円以上になっていた(種子田氏は債務承認をしている)。
種子田にすれば病院を担保にすることはいつでも可能だったはずである。しかし、種子田は病院の公共性を強調し、また厚生省(現厚労省)や地元自治体の許諾が得られないなどと言葉巧みに言い逃れ続けた揚げ句に所在を不明にしてしまったのだ。こうした種子田益夫の言動は詐欺にも等しく、吉郎は吉郎で益夫と悪徳弁護士の関根栄郷の指示により債権者たちとは一切接触をしようとしなかった。
監督機関に送られた書面によると、債権者たちは「債権被害者の会」を組織して、吉郎、益代、安郎さらには吉郎の長男佑人に対する債権処理を強く迫ると同時に、吉郎が何時までも常仁会グループの理事長職に居座り続ける問題を早く是正することを強く求めている。吉郎が今に至るも理事長職に安穏としていることは重大な問題であることは、厚労省を始め地元の自治体や医師会も薄々承知していたのではないかとさえ思われる。
債権被害者の会では、「種子田益夫氏が債権者をないがしろにして返済を怠り続け、逃げ回った揚げ句に他界し、益夫氏の子供たちは相続放棄をしてまで益夫氏の負の遺産を拒み続けながら病院グループの収益で豊かな日常生活を享受している現状は決して放置できるものではなく、今後、いかなる法的手段を講じてでも長男吉郎氏ほか益代氏、安郎氏の弟妹及び吉郎氏の長男佑人氏に対する責任追及を進める」という強い意志を見せ、さらに吉郎に対して監督機関が「病院グループの理事長という要職に在りながら、あまりにも無責任な振る舞いを続けるならば理事長職を降りるべき」という強い指導力を発揮すべきと要請している。
種子田益夫は令和元年10月13日に他界したが、それが父親の“遺言”でもあったのだろうが、直後に長男の吉郎以下益代、安郎の弟妹が揃って相続放棄の手続きを取るという有り得ない行動を取った。しかし実際にそれを実行した吉郎は社会的責任を放棄しているに等しく、そのような人間が病院グループの理事長に就く資格はない。同時に所管の厚労省や自治体が相続放棄という法的手段を悪用して平然としている吉郎を許しておくわけにはいかないとするのが必然ではないか。
そして、債権者にとってはもちろん、「他人に迷惑をかけない」という風習を社会的な美徳として重んじている多くの日本国民から見ても断じて許せるものではないのだ。吉郎以下益代、安郎の弟妹及び佑人も病院グループから上がる収益(前述したメディコム社の収益に係る地代家賃、給食やリネン等病院の運営に係るあらゆる事業)で、極めて豊かな生活を保証されており、債権者たちに対する債務の返済が十分に可能な状況にある。中でも吉郎は債権者たちからの差し押さえを逃れようとしてのことか、毎月数百万円もの賃料の賃貸マンションに住み続けている。一方で、吉郎を始め益代、安郎の弟妹も債権者に対する債務の返済を全く考えないという、あまりにも無責任極まりない対応に終始してきた。その行為は正に犯罪である。吉郎は医師の資格が無いにもかかわらず医療法第46条の但し書きを悪用した父益夫の裏工作により理事長に就任して現在に至っているだけでなく、吉郎のこれまでの対応は秘密裏に病院グループの収益から毎月6000万円という多額の機密費(裏金)を調達して父益夫に提供するという背任に問われ得る行為を長い間繰り返し、さらにコンプライアンスにも抵触する言動が多々あるなど、真っ当に病院グループを統括する資格は皆無と言っても過言ではない。
債権被害者の会は「このまま種子田一族による病院グループの経営が維持されれば、医療法が目的とする医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もって国民の健康の保持に寄与することが達成し得ないばかりか、告発を前提とした刑事事件に発展する可能性が高く、治療の最前線にある病院が混乱することは必至です。種子田一族による病院グループの私物化は明らかに背任を含む公序良俗違反であり、コンプライアンスに抵触しております」と吉郎が統括する病院グループの経営実態を監督機関に告発している。
監督機関は種子田一族が内包する収益至上主義という病院経営の歪みを解決させ、常仁会病院グループの経営を正常化させるために的確な監督指導を強化すべきである。